薬剤師として働いていると、経済的に辛いだろうと思われる患者さんにも出会います。
窓口だけでなく在宅業務に携わると、豪邸の様なマンションから地方公共団体が賃貸する住宅まで、色々な生活環境が見えてきます。
業務上、薬剤師はもちろん全ての人に同じサービスを提供するべきです。
しかし患者さんの家を後にするとき、ふと思うことがあります。
食べることにも困っている人は確かにいる。
疾病によって満足に動けず、食べるだけでなく日常生活でも苦しいこと。
病人や子供など、力のない人程、お金があるか無いかの違いで受ける影響が大きいこと。
今回は業務上ではなく、個人でできる格差是正を経済学の視点から考えてみます。
経済的不平等の専門家トマ・ピケティ
トマ・ピケティという学者をご存知でしょうか?
ピケティ氏はフランス出身の経済学者で、若い頃から優秀な成績を修め22歳で経済学の博士号を得ました。そのときの論文は「富の再分配の理論についての考察」でした。
その後は教授として活躍する中、彼は、
「今までの経済学は難しい公式を並べ立てているだけで、人々の役に立っていないのではないか?」と考え、研究をつづけました。
そして有名な、一つのシンプルで美しい公式を導きました。
r >g (あーる 大なり じー)
です。
それまで経済学者の研究と言えば、1つの国の長くても100年程のデータを研究して論文を発表することが普通でした。
しかしピケティ氏は世界20か国の200年以上の膨大なデータから、15年以上の年月をかけて研究し、誰よりも説得力のあるこの式を導いたのです。
r >gとは
rは資本の収益率、gは賃金の成長率を指します。
資本の収益率(r)とは、株や不動産などの運用で得られるお金の割合
賃金の成長率(g)とは、働くことで得られるお金の増加率
を意味します。
そして
資本の収益率(r)は年間平均4~5%
賃金の成長率(g)は年間平均1~2%
という数値がデータから示されました。
これはつまり資本家が株や不動産を運用して得られるお金の方が、私達労働者が働いて得られる賃金よりも大きくなり続けるということです。
資本家は、自身は働かずに運用して得られるお金が労働者の賃金より大きく、更にその得られたお金でより大きな運用益を出せるのです。
資本家の持つ富は時間と共に大きくなり、格差は広がり続ける一方となります。
「世界不平等研究所」(本部:パリ)によると、2021年世界の上位10%の富裕層が持つ資産は、世界全体の個人資産の75.6%を占め、下位50%合計の資産は全体の2%にとどまったとありました。
これまでの経済学者も資本主義によって富の格差が広がっていることは認識していました。
しかし格差がいつまでも広がり続けることはなく、「経済成長」「労働者の努力」「イノベーション」等があれば格差は縮むだろうと考えていたのです。
ところが、膨大なデータを元に導かれたr>gという式によって、今後ますます格差が広がり続けることが明らかになったのです。
元々ピケティ氏は資本主義を否定するつもりはありません。
ただ、広がり続ける格差は是正する必要があると考えており、ピケティ氏は累進課税が文明的な解決策ではないか、と唱えています。
累進課税とは簡単に説明すると「お金を多く持っている人ほど、税金を多く徴収しましょう」と言うことです。
ただし、これを実現するには世界各国が協力して累進課税政策を取らないと効果はありません。
資本家は課税から逃れるために資産を課税率の低い世界各国に分散させています。
これは違法でもなんでもなく、合法的な節税手段です。
個人が格差是正を行う方法
では、資本家や世界各国ではなく個人ができることは何があるか、を考えてみます。
私の結論としては、格差拡大のレールに乗って格差是正を行うことだと思います。
つまり薬剤師が資本家となってお金に働かせ、その運用益で寄付をする、ということです。
資本家と言っても仕事を辞める必要はなく、働きながらお金を運用する手法を取れば良いのです。
株式または不動産に投資し、あなたの資産を増やしてあなたの生活で賄いきれないくらいの運用益を出すことが理想です。
当然、寄付に至るまでは1年後や5年後の話ではなく十年単位の時間が掛かる手法です。
人によっては今すぐに寄付を必要としている、との主張もあると思います。
今すぐ日本人全員が1円ずつ寄付すれば1億円以上になるのに。そしてそれで救われる人もいるのに。と言う考え方もあります。
もちろん私はそれを否定しません。人の考え方・思想は自由です。
しかし、現実はどうでしょうか?
目の前に苦しんでいる人には協力するが、遠くで苦しんでいる人に協力する人は極々少数です。
格差が広がり続ける以上、寄付を必要とする人たちは増え続けると考えられます。
そして、根本的に解決するには莫大なお金が必要です。
問題を解決してくれるお金は、誰しもの生活の糧でもあります。
寄付をする人もお金で住むところや食べ物を得ています。
それならば人を救えるようなるために資本家となって資産を拡大し、運用益を寄付できる人になれば良いのではないか?と私は考えました。
「今やっている奉仕活動を辞めろ」とか「富が増えるまでは寄付をせず投資に回せ」とか言っているのではなく、資本家となって資産を増やすレールにも乗ろう、ということです。
私は正直に告白すると、自分が人に寄付を募るのも、自分が寄付を求められるのも苦手です。
お金はある意味、生活をつなぐ役割を持っているからです。
だけど命をつなぐために寄付を必要としている人達もいます。
それならば自分が資産家となって、これまでの自分では出来ない位の金額を寄付できる存在になったらどうか?と考えました。
r>gから考える、私の行程
ここまでは薬剤師が出来る格差是正の、1つの考えを記してきました。
ここからは、私が思う理想の自分を記します。
ピケティ氏が多大な労力から導いてくれた、
r >g という式。
今の資本主義社会のルールと、自分の矮小な思想は理解できました。
投資をして格差拡大のレールに乗り、自分の資産を増やす。
増えた資産が運ぶお金で、寄付を行う。
いずれ仕事が出来なくなったときに、自分の生活が困らないことと必要な人を支援することを両立させ続けることが私の理想です。
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